親の老いや介護でストレスをためないための予備知識。

高齢になりつつある親の変化に戸惑ったり、「いつか、もしかしたら…」と親の介護がふと脳裏をよぎったり…ってありますよね。  
でも漠然と不安でいるよりも、少しでも対処法がわかることで心構えにつながるように、心理カウンセラーおよび介護福祉士さんにお話をうかがいましたよ。

教えてくれたウェルネスプロ

心理カウンセラーおよび介護福祉士

なかやしのぶさん

教えてくれたウェルネスプロ

ふわっと。編集者

太田尚代

「老いていく親の姿を受けとめられない」それは自然な心理です

太田:親の老化による変化でよく聞くのは、急に頑固になったり、同じことを何度も言うようになったり。そして、そんな親の老いに戸惑ったりイライラしたり。
その一方で、「親に優しくなれない自分が嫌になる…」という話もよく耳にします。

なかや:親子間に限らず、奥さんや旦那さん、家族の誰かが介護や看護が必要となった時、まず戸惑うし、「まさか!?」「そんなわけない!」と否定する気持ちが出てくるのは自然で、ほとんどの人がたどる心理状態なんですよ。

だから、そんなふうに感じてしまう自分を悪く思わなくていいし、「こういう気持ちは自然なことなんだな」と頭にあれば、自分だけじゃないんだと救われるかなと思います。自分を責めてしまうと苦しいですからね。

なかやさんは心理カウンセラーであるとともに、特別養護老人ホームで現役の介護福祉士として勤務している

太田:実際に、親が口うるさく言ってきたり、頑固になってしまった時に、イライラしてしまう自分をどうしたらいいんでしょう。

なかや:イライラしちゃうのって、余裕がない時なんですね。
イライラは「怒り」ですけど、「怒り」の下には必ず「傷ついている」「寂しい」「悲しい」「分かってほしい」という気持ちが隠されているんです。
だから「分かってほしい」「どうなっていくか怖い」「戸惑っている」という気持ちを誰かに話してみるのがいいですね。
身内やお友達に話せるといいし、いなければカウンセラーに「もう腹が立っちゃうんだよね!」と打ち明け受け止めてもらうと、心にゆとりができますよ。 

ずっと愛される側だった自分。今、湧き上がってくる気持ちを見つめてみて

なかや:子どもの頃から「親は愛してくれる側」、今度は親が老いることで立場が逆転していくわけです。
でも大人になっても無意識に「親は愛してくれる側」という気持ちは残っている。親への不安とか文句とか、「こんなふうにしてほしかった!」という思いを抱えて大人になることってあって。

太田:満たされない思いというんでしょうか。

なかや:そうですね、満たされない思いが残ったままだと、「えっ!?介護させられるわけ?」「まだ何もやってもらってないのに!」って腹が立っちゃう人もいる。優しさだけではやっていけないご家庭も結構あると思います。

太田:他の家庭と比べて「親に優しくしなきゃ」と思わなくていい、と。

なかや:「もっと愛してくれなきゃ困る」とか、「なんで愛してくれなかった!とっととボケやがって!」とか、積もった不満が出てくることもあるんです。
そんな時は、親のことはちょっと横に置いておいて、自分の思いを認めて大事にするのがいいと思います。

「認知症?」と思った時、様々な受診の工夫でスムーズな対処が可能

太田:親の変化に「認知症かな?」と思った時、親を病院に連れて行くってとてもハードルが高いんですけど…。

なかや:「認知症の検査で病院に行こう」と言っても、「行かない!」と言う方が圧倒的だと思いますね。
ですから健康診断に行くように「検診に行こう。ちょっと年とってきたし、1回行っておこうか」って、そう言って連れ出すのが自然ですね。

太田:かかり付けのお医者さんでもいいですか。

なかや:はい、その場合は事前に「認知症のことで」と病院に知らせてからでもいいし、受付でお手紙を添えて「これを先生に渡してください」と、認知症を診てもらいたい事情を声に出さずに伝える方法もあります。

太田:親に本来の目的を知られない、すごくいい技ですね。

なかや:簡単に病院に連れ出せない場合、うちの母の例ですが、「ご飯を食べに行こう」と誘って車に乗せて行きました。病院に着いて、「先にここに行くよ」って。抵抗されながらもなんとか診てもらうことができましたね。
地域によっては往診で来てもらう方法もあるので、役所とか地域包括センターに相談するといいですね。

「往診は検査機器が限られているので、脳の状態までは診てもらえないとしても、認知症の程度は診てもらえると思いますよ。」

認知症に気づいた親本人が1番怖いし、1番傷ついてしまう

「これまでは『無理やりでも病院に連れて行くべき?』と不安でしたけど、いろんな方法が分かって少し安心しました。」

なかや:「私たちが困っちゃうから病院に行って!お母さん」って、ありがちですけど、一番傷ついているのは親御さん本人なのでね。認知症の疑いを突きつけられると深く傷ついちゃうことがあるんです。

太田:親自身が「自分は認知症かも?」と気づいていること、あるんでしょうか。

なかや:あると思います。薄々感じていたりして。
買い物に行って「あれ?何を買いに来たんだっけ?」「お金のが出し方がわかんない」とか、同じ物を何個も買うとか。
道で「ここ、どこ?どうやって帰ったらいいんだろう」とか。

そうなった時、本人が一番怖いと思うんです。
でも小さな子どもと一緒で、まず隠すと思います。無意識に「怒られちゃう」って思ったり、プライドもあるし。
本人が戸惑う・否定するのも必ずたどる心理状態なので。

太田;でも隠されるとイライラしてしまいそう。

なかや:はい、イライラしちゃうと思います。
ただ、いろんな人の力を借りることがわたし的にはおすすめです。
介護サービスって本当にいろんな相談や対応ができるので。
認知症の認定を受けるとケアマネージャーさんと今後の相談ができますし、病院、役所、地域包括センター、施設もあります。それにお薬もありますし。

太田:薬は認知症に対処するための?

なかや:ほとんどの認知症は治せるものではないし、効果は個人差がありますけど、症状を遅らせることができるとされているお薬が幾つかあって。
ただ、早ければ早いほどいいので、迷うより相談がおすすめです。

「自分では介護が十分できないかも…」って、罪悪感は全然要らないです。

太田:私は将来、親の在宅介護はできそうもなくて、施設入居という選択肢に罪悪感を感じてしまいそうで…。

なかや:私は「全然そんなことを思わなくていいよ」とお伝えしたいです。
私は特別介護老人ホームの職員(介護福祉士)として働いていて、自分の仕事として「愛してあげる人がいる、すごくいいことだな」って思うんですよね。「この人に、ここで出会えてよかったな」って思わせてもらうことが沢山あるんです。

太田:じゃあ、施設入居が良くないことじゃ…。

なかや:全然ないと思います。
むしろ親本人も、子どもに負担をかけてるって悩みを抱えるんですよね。
「仕事を休ませちゃってるな」とか、お嫁に行った娘に面倒見てもらうしかない時に「向こうのご両親とか旦那さん、大丈夫かな?迷惑かけるな」って。
自分がお荷物になっちゃってる、自分が子どもを幸せにしたいのに、幸せの妨げになってるって罪悪感を持つ方もいらっしゃるんです。

だから、介護してあげるとしたら「してあげることがすごく嬉しいんだよ!」って言ってあげられる方がいい。
施設に入るなら「お父さん、ここで見てもらってるからすごく安心だよ」って言ってあげるだけでいいと思うんです。
お互いに一緒にいることで罪の意識を持つ方が、お互いの関係や心に悪い影響を与えちゃうこともあるのでね。

介護を助けてもらうのは恥ずかしいことじゃない。頼ってください。

なかや:親の在宅介護のために退職してしまう方もいらっしゃいますが、自分の仕事はなるべく続けられたらいいですね。救う手がいっぱいありますもん。仕事が大事なら仕事を続ける。自分が1番いい状態でいられることを選択してほしいです。

太田:辞める前に相談した方が本当はいいのに、相談できないケースが多いんでしょうか。

なかや:介護だけでなく、何かを人に頼ることを恥ずかしいと思いやすい日本人の民族性もあると思うんです。
頑張り屋さんは一人で抱えてしまいがちですけど、「誰かに頼めばいい」って思っておかれるといいです。
介護に従事している側は「助けたい」と思っているし、「使ってください」って思っているんですから。

太田:サービスを利用する側では、全然想像がつかない言葉です。

なかや:「助けてください!」と言ったら、「こういう方法があるよ」って返ってきますから。気持ちのうえで、かなり楽になると思いますね。
老いていく親といい関係を作るためには、お子さん側の心を健やかに保つことが一番ですので、ご自分の心、人生を大事にされるといいと思いますね。

なかやさんが普段お仕事をされる中で感じていらっしゃる沢山の言葉が、とても心強く、勇気にもなりました。
親の老いをむやみに不安がらずに、助けも借りながら、親にとっても、子どもにとっても、いい時間にしていけることは何かを考えていきたいです。
教えてくれたウェルネスプロ

心理カウンセラーおよび介護福祉士

なかやしのぶさん

〈プロフィール〉
カウンセリングサービス所属カウンセラー/東京地区担当

<略歴>
2018年11月からボランティアカウンセラーとして活動。
2021年1月からカウンセリングサービスのプロカウンセラーとして活動開始。

<現在>
1975年1月生まれ
夫、息子、娘と4人暮らし。
介護福祉士として、老いと死を受け入れていく人たち、その家族の心のケアを行いながら、認知症の母親のサポートも行っている。

◇カウンセリングサービスHP https://www.counselingservice.jp/
◇心理カウンセラー なかやしのぶ ブログ  https://nakayashinobu.blog.jp/

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